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戦う税理士 小栗のメールマガジン
「会社への貸付金にはこんな税務否認の事例もあるんです。」No.979
皆さん、こんにちは。戦う税理士の小栗です。
確定申告も終わり、いよいよ税務調査が本格的に始まります。
我々も身構えるのですが、その中でも一番恐れているのが「同族会社の行為計算否認」という
「法律には違反していないが、租税回避と思われるので認めない」という
税務署長(国税局長)が独自の判断で否認ができるという規定です。
税務署長王様論などともいわれています。
もともと法律に従った取引なので問題はないと思っているところへの指摘ですから、
なかなか納得のできないケースも多々あります。
ということで、
今日の「難しくてためになる話を優しく解説」するメルマガは
「会社への貸付金にはこんな税務否認の事例もあるんです」です。
法人の株主でもあり社長でもある個人が会社に資金を貸し付けることはよくあります。
こんな時に皆さんは何%で貸付ければ問題と思うでしょうか。
いろいろな説がありますが、通常であれば無利息でも問題はありません。
なぜなら、法人は利息を払わない分だけ得をしているのですが、
それを計上されるとすると反対勘定である支払利息も計上をしなくてはならず、
結果として損益はゼロになるからです。
本来はこれで終わるはずなのですが、今回ご紹介する事例(令和6年5月15日裁決)では
利息をもらわなかった個人が「租税回避になっている」として課税を受けているという点が注目です。
先に結論を申し上げておくと、利息を取らないことが問題なのではなく
ケースバイケースで問題になることもあるということです。
今回のケースでは、
・株主である社長が会社が発行する社債を引き受けていた(金額不明)
・税制上のメリット(個人)がなくなったので、会社が社債を買入償還した
・その資金を会社に貸付けた(81.6億円)
・貸付金利が著しく低利であるとして、過年度に遡って利息(雑所得)を認定された
・処分を不服として争ったが、不服審判所で負けた
こんな感じです。
争点は「本件消費貸借を容認した場合に、
請求人らの所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるか否か」であったわけですが、
国税側は日本銀行の貸出約定金利(約0.8%)が妥当として実際の金利との差額を個人に認定したわけです。
社長としてはもらってもいない金利に課税がされるのですから大変です。
個人的にはこの法理論はおかしいと思っているのですが、
「行為計算の否認」というのは、「不当に税負担が減少している」という点を重視していますから、
その行為の背景というのが重要となります。
今回のケースでいうと
・金額が非常に多額である
・会社に借入をしなければならない理由がない
・金利が不当に低い
三拍子揃ってしまっています。
金利が高ければ問題なかったのかというとそうとも言い切れません。
最も重要なことは「なぜその貸付(借入)をする必要があったのか」です。
会社が資金繰りに困っていて、それを社長が低利で助けていたとすれば
問題にならなかった可能性が高いと思います。
折に触れ「経済的合理性が必要」という言葉を使っていますが、
これをすれば節税になりそうだ、他社でもやっているから大丈夫だ、
このような考え方ではタックスプランニングは失敗することがあります。
実行する前に十分な検討をするという準備を怠らないようにしてください。
では、次回もお楽しみに。
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