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賃貸不動産を利用した相続対策が最高裁で納税者敗訴です。その2
こんにちは。
戦う税理士の小栗です。
前回のメルマガで
最高裁で賃貸不動産を使った
相続対策をめぐる裁判で納税者が敗訴をしたという話をしましたが、
思いのほか反響が大きく
もっと情報が欲しいというご要望がたくさん来ましたので
今日は続編をお届けしようかと思います。
ということで、今日の「難しくてためになる話を優しく解説」するメルマガは
「賃貸不動産を利用した相続対策が最高裁で納税者敗訴です。その2」です。
さて、この不動産を使った相続対策が否認されてしまった事件ですが
何が問題であったのかを少し整理しておきましょう。
最高裁は
「平等原則の観点から、租税負担の軽減をも意図した購入・借入が行われた本件においては、評価通達による画一的な評価を行うことは他の納税者とも租税負担の公平に反する」
と判断しました。
つまり、
一部の資産家のみが実行できる対策でもって
節税ができるというのは
公平ではないということですね。
個人的には「うーん」という感じですが、
言っていることは分かります。
そして、否認の根拠となっているのが
総則6項
「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」
という、
いわゆる伝家の宝刀ともいえる
「国税庁長官の指示」というものです。
言葉は悪いのですが、
通常は国税庁が決めた評価通達でいいですが、
(これを根拠にして節税をしています)
やりすぎた場合には
国税庁長官の判断でダメだと言いますよという話です。
これはこれで
行き過ぎた節税を規制しようという意図ですから、
他の税法にもよくあり別に異論はありません。
しかしながら、
「著しく不適当」という基準が明確ではなかったために、
これまでも訴訟が絶えなかったのに
今回もそれについては
何等判断はなされませんでした。
この件については実務家としてはがっかりしています。
東京地裁では、
「本件不動産の評価額と不動産鑑定評価額との差額が非常に大きいものであった」
というところが強調されております。
ちなみに鑑定評価額と通達評価額との差額は約4倍でした。
この差額が他の財産を圧縮することになり、
相続税がゼロになっています。
東京高裁に行くと
もう少し別の観点からの見解が加えられています。
「本件における開差はそれ自体が大きなものと認められるし、(中略)近い将来発生することが予想される本件被相続人の相続において控訴人らの相続税の負担を減じまたは免れさせるものであることを知り、かつ、それを期待して・・・」
といった被相続人や相続人の節税の意図に言及しています。
最高裁ではこの部分を追随しています。
さて、まとめに入りましょう。
ポイントの一つ目が、
節税のみを目的とした投資であったのかどうか。
これは、
相続を開始してから約9か月後に
不動産を売却して
借入金の返済に充てているという点が
指摘されています。
また、
金融機関の稟議書にかかれていた
「相続対策」という表現。
ポイントの2つ目は、
課税の公平の観点。
6億を超える資産があったにもかかわらず
この投資によって相続税がゼロになっているという点。
この辺りが大きかったと思います。
その他にも色々な点があるのですが、
不動産投資にはリスクもあります。
その点を踏まえて
長期の資産のポートフォリオを組むことは
正しい判断だと思います。
そして、
その不動産の投資利回りはどの程度で、
投資として妥当なものであれば
私は今後も
不動産投資については
問題ないだろうと思っています。
いずれにしても
今後の実務に
何らかの影響があるのは間違いないですから、
不動産投資をする場合にも
専門家に相談をしながら進めるのは
重要なファクターになってくると思います。
では、次回もお楽しみに。